Story

世界に誇るものづくりの町で
工匠の技を支える工作機械

2019年8月5日 取材

匠のものづくりの現場を支える工作機械

東京都大田区には3,000を超える町工場があり、その8割以上は従業員10人以下の企業が占める。ものづくりの対象も非常に幅広いが、その特徴の一つは、ロケット部品や新幹線の部品など0.001mmという超精密部品を精密加工することである。品質と納期を共に守り続けることを通して、国内外からの発注先からの厚い信頼に支えられながら今現在も大田区は、世界に誇る日本の製造業を支える代表的な町の一つである。そんな大田区で80年以上のものづくりの歴史を持つ中井精密もまた、同区を代表する工匠の1社である。

1937年の創業。NC自動複合旋盤によるベアリング部品を中心とした精密加工を得意とする株式会社中井精密。創業から約80年、轆轤(ろくろ)からカム式、自動旋盤、NC自動複合旋盤へと機械設備を変えながらも、超精密加工の分野で常に精度の高いものづくりを追求してきた。その中井精密が約40年来、丸紅テクノシステムから継続して購入している主要設備の一つが、丸紅テクノシステムが販売代理店を務めるシチズンマシナリー株式会社製のNC自動旋盤だ。ものづくりの現場における丸紅テクノシステムの役割に関して、中井精密に納入したNC自動旋盤の機械メーカーであるシチズンマシナリーと、中井精密に取材した。

中井精密を担当する丸紅テクノシステムの営業マンは、車体設備・工作機械事業部工作機械チーム長の小沼正樹。過去には、国産第一号の旋盤を作った老舗工作機械メーカーでも多彩な経験を積んだ、工作機械の専門知識を持つセールスエンジニアでもある。

「中井精密様に、NC自動旋盤を最初に購入いただいたのは、工作機械にNC装置という制御装置がつき始めた頃でした」(小沼)

中井精密に導入しているNC装置は丸紅テクノシステムが代理店を務めるシチズンマシナリー製。
「工場内には他社製の工作機械もありますが、丸紅テクノシステムの的確な製品提案力と技術指導の助けのお陰で、シチズンさんの機械は他者製品に比べて、導入時のハードルも低く且つ操作性もユーザーフレンドリーです」(株式会社中井精密・中井社長)

機械は日々進化し、最新のNC自動複合旋盤には、オプション機能面で様々な選択肢があり、どの機能を追加・選定するかによって仕事の幅も変わる。
同じ機械を使用していても工匠によって作れる物が違う、時には同じ工作機械でもモデルチェンジでそれまで作っていた物が作れなくなってしまうこともあるという高い精度と品質を求められる工匠の世界。
お客様のものづくりに最適な機能を満たした機械を、将来の拡張性も見据えて提案するのが代理店である丸紅テクノシステムの重要な役割の一つだ。そのため営業担当には工作機械の深い知識だけでなく、お客様との「共通言語」である技術に対する実践的な知識も不可欠になる。

「中井精密様のものづくりに最適な装置とオプション機能とを選択して頂くため、機械の購入を検討頂く際には中井社長と常に寄り添いながら、計画を一緒に詰めていきます」(小沼)

“失敗させない”という気持ちで提案する

メーカーが最新鋭の能力の高い設備機械を開発・製造し、商社は販売店としてお客様とコミュニケーションを取りながら、その機械の作業能力をきちんと伝える、結果的にその機械を導入したお客様は、適性の高い機械で付加価値の高い製品を作り出し、仕事を継続することができる。そうした、“良い循環を作りだすこと”も商社の重要な役目だ。

引き合いから最終的な仕様決めまでには、何回かのステップを踏む。最初の情報が正確であればあるほど、商談のまとまりが効果的でスピーディーになる。
「メーカー側からすると、小沼さんは機械や作業特性にも非常に詳しく、お客様との間で機械の仕様や導入の条件等をある程度詰めた状態で我々メーカーへ連絡を頂けることが、非常にありがたいです」(シチズンマシナリー株式会社・金泉様)

「お客様の要望と機械の仕様を見極めながら最適な落とし所を見つけ出すことが重要になります。
お客様に対しては、買ってもらうからには“失敗させない”という気持ちで常に提案しています」(小沼)

機械の機能を120%引き出す老舗町工場の匠の技

高精度・高品質、小ロットのオーダーが多いのが中井精密のものづくりの特長。“難しい仕事も中井精密になら任せられる”、という長年の安心感と信頼関係が、次の仕事に繋がっていく。

「オーダーされる品物は1個から、10個、1000個と様々です。クレームはほとんどありません。ミスを出さないことで、信頼を勝ち取っているかなと思います」(株式会社中井精密・中井様)

同じ機械を使っても、出来上がる製品の品質、価値は工場によって違ってくる。生産財の機能の良し悪しはもちろん重要だが、ものづくりに関る匠の技、積み上げてきた経験がものを言う世界だ。

「シチズンマシナリーとしては、同じ機械を提供しますが、やはり機械とは所詮は道具ですので、使うお客様によって使われ方は違います。機械の機能を100%、120%活かせるような使い方をされているのが、中井精密様だと思います。また、機械導入後の経過については、丸紅テクノシステムの小沼さんからタイムリーに報告を頂きます。売りっぱなしではなく小沼さんが、稼働後のアフターフォローも徹底されていることが、中井精密様の高品質なものづくりが続いている成功要因の一つだと思います」(シチズンマシナリー株式会社・金泉様)

メーカー、商社、お客様が三位一体となることで、高付加価値の製品を世に送り出し、仕事の継続につなげていく。その三位一体の要となるのが、商社である丸紅テクノシステムの役割である。