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2019年10月2日 取材
日本最大の工業地帯である中京工業地帯。 自動車産業や航空機産業をはじめ、多くの製造業が集積しており、工業製造の国内シェアは20%を超え、なかでも輸送機器は全国出荷額の約5割を占める。 今回、燃料系小型精密部品の自動組み立てラインを導入した愛三工業は、トヨタグループのティア1にあたる自動車部品メーカー。自動車部品の中でも、燃料系の精密な小物部品を多く手がけるメーカーだ。トヨタは現在、グループ全体でグローバルなクルマづくりの構造改革に取り組んでおり、TNGA(Toyota New Global Architecture)を進めている。 そうした取り組みの中で自動車部品の共通化が進み、愛三工業がこれまでも手がけてきた燃料系小型精密部品の生産量増加が見込まれることになった。類似の部品については、これまで半自動ラインで手がけてきたが、予想される発注量を考えれば全自動ラインが必須となる。そこで、丸紅テクノシステム名古屋支店に声がかかった。
愛三工業株式会社 生産技術部 燃料系組付室 三宅チームリーダー
「自動ラインとなると、機械単体ではなく搬送まで含めてお願いすることになるため、それなりのキャパと対応できる環境があるメーカーさんにお願いする必要があります。そこで、より広いネットワークと全自動ラインの納入経験を持つ丸紅テクノシステムさんにメーカーの選定をお願いしました」 (愛三工業株式会社・三宅様)
「技術力だけでなく、コスト競争力も高いメーカーを紹介できるよう、選定を行いました。特に愛三工業様は燃料系小型精密部品を取り扱える高い技術を持っていますので、そうした技術にある程度対応できるメーカーを選定するよう心がけました」(稲葉)
名古屋支店 稲葉課長代理
20点ほどもある精密部品を組み付ける自動組み立てライン。静電気による部品の張り付きや、供給の負圧による位置のズレなど、小物特有の難しさがある。組み付ける部品は、鉄や樹脂、ゴムにバネと素材もカタチも様々。それを自動で組み合わせ、さらにこれまで愛三工業が納めてきた高い精度と品質をださなければならない。 今回は新製品のため、テスト段階では少量しか部品が手に入らない中、搬送を含めて全自動化するのは非常にハードルが高い。ものは組めるが精度が出ない、設備が悪いのか、各部品が悪いのか、試行錯誤の中での設備設計は困難を極めた。
完成した1号機
「品質面での課題がなかなかクリアできず、1号機の時は納期に間に合わないのではないかと、ハラハラしました。一ヶ月以上、お客様と共に現場に張り付いて、一緒に創りあげていきました」(稲葉)
「毎日のように起きるトラブルをリスト化したうえでメーカーと対策を立てていただき、一つずつクリアにしていきました。短納期のなか、遅くまで協力いただいて、完成にこぎつけることができました」(愛三工業株式会社・三宅様)
お客様とメーカーと共にたくさんの課題を克服し完成した新たな自動組み立てラインは、半自動化ラインによる組み立てに比べ、作業効率が2.5倍も上がったという。
1号機を無事に納品した後、続けて2号機の発注にも繋がった。 「実際に設備を納入した後、不良も減り、生産能力も上がってきましたので、この状態なら増産で同じラインが欲しいと続けてお願いすることにしました」(愛三工業株式会社・三宅様)
2号機を発注した時期から、生産動向が大きく変化し、2号機はさらに短納期での発注となった。 1号機は納品後に現場で改善したり、仕様をプラスしたりしている。2号機は、そうした内容を最初から全て取り込んだ状態で設計を立ち上げた。
「設備を作ってから品質が安定するまでの期間が相当長く必要だということを、1号機の時の苦労で知りました。ですから、2号機はなるべく早く作って、トライ時間を長く取ろうというのが、関係者全員の共通認識としてありました」(稲葉)
1号機での学びが2号機に活き、短納期にも関わらず2号機の納品は大きなトラブルもなく順調に納めるに至った。
「このプロジェクトでは、お客様と一緒にものづくりをすることの重要性や厳しさを学びました。同時にお客様との強い信頼関係を築くことができたと感じています」(稲葉)
自動車業界では部品の共通化が今後ますます進み、生産の効率化と品質の安定化の両立が求められる。 そうした流れの中で1号機、2号機を納入した経験が次の製造設備の納入に活かされていく。